- 2003年12月号(55号)- |
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「実家が代々酒屋を営んでおりますので、私も学校卒業後10年間、ワインの販売に携わりましたが、ずっと、自分の売りたいワインと違うんじゃないかという違和感があったんですね」と語るのは(株)ワインプラザ「マルマタ」の店主、鬼頭秀明さんだ。 折しも店舗営業に関する規制緩和が進み、個人商店である鬼頭さんの店もそのあおりで売り上げが伸び悩んでいたため、思いきって渡仏。妻の祐子さんとともにワイン探しの旅に出発した。 |
「最初は、試飲会で知り合った生産者のワインカーブを訪ねたり、その仲間を紹介してもらったりしていましたが、やっぱり『何か違う』という感覚をぬぐい切れないでいました」 そんな鬼頭さんが初めて「求めていたワインはこれだ!」とひらめいたのは、マコネー地方の試飲会でのことだった。 「人工的に手を加えられたワインの味に疲れていた時、今まで味わったことのないワインに出合いました。飲むと元気が出てくるようなエネルギーに満ちたワインだったんですね」 |
「自分が探していたワインのアウトラインがようやく見えてきました。その後もいろいろな生産者のところを訪ねましたが、おいしいワインを生産している人たちというのは、土づくりから収穫、発酵、熟成まで、昔ながらの方法を取り入れています。ぶどう本来の生命力を高める手助けはするけど、農薬や添加物は使わない。そういうところで育ったぶどうは強いので、酸化防止剤など加えなくても、酸化しにくく、栓を抜いても味が落ちないんですよ」 |
「現在、35人の生産者から90種類のワインを輸入していますが、私の取り引きしている生産者は、みな小さな農場主たちですから、毎年安定した量を確保できるかという問題はありますね。それをどうサポートしていくかが今後の課題でもあります」 |
「ワインに関する法律やシステムにも問題がいろいろあって、本当においしいワインが、格下のテーブルワインとしてしか認められないという現状があります。でもそのあり方に疑問を持つ声も少しずつ上がってきています。私と同じような考えを持って、販売しているフランス人もたくさんいますので、これからは世界中の仲間と手を組んで、本物のおいしいワインを流通させていきたいですね」 いいワインはどれだけ飲んでも体にやさしく、絶対二日酔いしないというのが持論。そして「ワインはあくまで料理を引き立てるわき役であってほしい。おいしい食事に欠かせないさりげない飲み物として存在するのが本来の姿」だと考えている。 |
記者も三種類ほど買って帰り、夕食時にいただいたが、スイスイ飲めて酔い心地もよく、さらに二日酔いもまったくなかった。 同店では試飲もできるし、ワインに関する質問にも鬼頭さん夫妻が親切に答えてくれる。クリスマスシーズン、食卓においしいワインを添えてみてはいかがだろう。 取材・加藤あつこ |
エコなお店 - 2003年12月号(55号)- | ■閉じる |